Q. 交通事故に遭ったのですが、被害者の私の方にも落ち度があったということです。過失相殺、という言葉も聞いたのですが、これはどういう意味で、どう影響するのでしょうか?
A. 交通事故は多くの場合、どちらか一方に完全な非があるわけではなく、加害者の方にはもちろん、被害者の方にも何らかの落ち度、「過失」があって起きます。その過失の程度や内容などによって、損害賠償額が減額されることを、「過失相殺」と言います。
過失割合はどのように決まるのか
事故のパターンもいろいろです。歩行者と自動車、自転車と自動車、自動車同士、自転車と歩行者…などなど、どんな事故によっても、被害者にも落ち度があったとされる場合が多いようです。とりわけ、お互いに走行していた自動車同士が接触するなどの事故の場合には、被害者の方になんの過失もなかったと認められる方がまれです。
被害者の感覚としては、一方的に当てられ、怪我をさせられた上で、「過失があった」と言われると頭にくるかもしれませんが、ある程度は仕方ありません。ただし、その過失の割合(8対2、7対3など)については、言い争う余地があります。通常、交通事故の過失割合はその状況によって示談交渉の中で決められるのですが、不当に被害者側の過失が大きくされないように、弁護士にも相談して、言い分はきちんと主張しなければなりません。
とはいえ、事故の発生状況によって、おおむねどれくらいの過失相殺が認められるのかというところは、実は一定の基準ができており、それに基づいて判断されます。裁判所も弁護士も保険会社も、東京地裁民事交通訴訟研究会の認定基準を用いて、過失割合を算出するようです。ただし、これはあくまで「基準」にすぎないので、事故ごとの固有の事情によって、加害者側に加算したり、被害者側に加算したりで、5~20%ほどは調整されます。
過失が加算される例
被害者側
- 危険な注意不足があった場合
- 事故が起きたのが夜間である場合
- 事故現場が幹線道路で、被害者が歩行者だった場合
- 被害者が横断した場所が、本当は横断禁止場所だった場合
加害者側
- 道路交通法違反があった場合(速度違反、合図なし、飲酒など)
- 事故現場が商店街や住宅街であった場合
- 危険な注意不足があった場合
まとめ
- 「過失相殺」とは、事故が発生するに至った被害者側の「過失」を鑑みて、損害賠償額を減額する制度。
- 一方的な事故でない限り、被害者側にも多少の過失はあったと認定されるのが一般的。
- その割合について不服に思うところは、弁護士に相談して主張すべき。