参照元: 一方的に内定を取り消されたのですが、何ができますか - 京都はるか法律事務所
正当な理由のない内定取り消しは、法で認められません。「内定=労働契約の締結」です。それが一方的に取り消された場合には、学生は、内定通りに採用することを求める権利があります。あるいは、損害賠償を請求することも可能です。
企業の内定取り消しは「解雇」に準ずる行為
新卒採用を行っている企業では、高校生・大学生の採用に際して、採用試験に合格した者には、実際に就労する数か月前に内定を出すことが一般的となっています。これは、もともと有為な人材を早い段階で確保しておきたいという企業側の思惑から生まれた慣行です。
内定をもらった学生が、後からそれを断り、内定を辞退することは問題ありません(会社が学生に対して宣誓書などを書かせて拘束することは、法的に認められない行為です)。
ただし、企業の方は、いったん出した内定を正当な理由なく取り消すことはできません。
内定通知書には、採用の日、採用職種、配置先などが書かれています。この通知を受けると、学生と企業は「始期付解約留保権付労働契約」などと言われる一種の労働契約を結んだことになります。そして内定を受けた者は、まだその時点では就労していなくても、労働基準法、労働契約法などの保護を受けます。すなわち、内定取り消しは、「解雇」に準ずる行為になるのです。
内定が取り消されたときの対応
上述の通り、企業から内定を受けた者は、その時点で労働契約を結んだことになり、労働基準法、労働契約法などの保護を受ける「従業員」として扱われます。
そして、次のような規定の適用を受け、従業員としての立場が守られます。
労働基準法20条1項前段第1文
「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。」
労働契約法16条
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」
――すなわち、正当な理由のない内定取り消しは、無効です。訴えを起こせば、裁判所で従業員としての地位を確認してもらうことができ、契約の通りその職場に就労できます。
とはいえ、いきなり内定を取り消しするような企業で働くことができるのか、という「不信感」の問題もあります。言い方は悪いですが、実際に働きだす前から、「あなたは会社に必要ではない」と言われたようなものです。もし契約の通り就労することに不安があるならば、その企業に対しては損害賠償を請求し、別の就職口を探すのも一つの考え方です。
まとめ
- 企業による正当な理由のない一方的な内定取り消しは認められない。
- 内定を受けた者は、実際に就労する前から従業員と同じ扱いを受ける。
- 内定取り消しには、「無効にさせる」か「損害賠償を請求する」の二つの対応がある。