Q. 会社から何度も「辞めろ」と言われ、精神的に追い詰められて、本当に退職届を出してしまいました。しかし、後悔しています。退職届を撤回することはできるでしょうか?
A. 会社から退職を迫られて、不本意にも退職届を出してしまった場合には、撤回できる可能性はあります。裁判例によると、労働者から提出された退職届は、使用者との間で交わされる雇用契約を合意解約する申込み、という認識です。よって、使用者が、その退職の申込みを「承諾」するまでの期間は、撤回できる可能性があるのです。
もし自分の意思ではなく、会社(上司)に強制される形で退職届を出してしまったという場合には、解雇の権限を有する人事部長などが、その届を正式に受理するまでに「撤回します」と意思表示しましょう。間に合えば、一度提出した退職届も無効としてもらえることができるかもしれません。
退職届が受理された後も撤回できるケースがある
退職届の撤回が間に合わなかった場合にも、退職の意思表示を取り消すことができるケースはあります。それは、あなたが退職届を出したという行為が、「強迫による意思表示」(民法96条)だった場合です。つまり、自分の意思でなく、他人に脅されて提出させられた退職届は、取り消すことができる可能性があるのです。
「この退職勧奨に応じない場合は、退職金も出ない」などの脅しに屈して退職届を出してしまった場合には、後から撤回できる可能性があるので、弁護士にも相談してみるといいでしょう。
ただし、そのような環境の職場に戻ることは、一般的に、精神的にも辛いことかと思われます。「辞めろ」「辞めろ」とプレッシャーを与えてきた職場に戻って、以前と同じように仕事ができる人はむしろ少数でしょう。居心地の悪い思いをするくらいなら、どこかですんなりと考え方を変えて、転職してしまった方が賢明かもしれません。
退職の意思表示の取消、無効は、なかなか認められることが少ない問題です。とはいえ法的に主張する余地はあるので、それ以外の解決の道(転職など)も考えて、「どうしても」という場合には弁護士に話を持ち込んでみましょう。
まとめ
- 退職届は正式に「受理」されるまでは、撤回できる可能性がある。
- 一度退職届を出し、もし後からその意思を取り消したいと思った場合には、早めに会社の人事部長など解雇の権限を持つ人に話をする。
- 脅されて提出した退職届は受理された後でも撤回できる可能性がある。