ご紹介: 残業代はどのような場合に発生しますか|労働問題 – 京都の弁護士 京都はるか法律事務所
Q. サービス残業について質問です。弊社は残業代を減らすべく、残業については原則禁止とし、必要がある場合には許可制として事前の申請を義務付けました。ところが弊社の従業員の一人が、事前の申請無く残業を常態的に行っており、その残業時間について残業代を請求してきました。残業禁止命令を出していたのにこれを支払う義務はあるのでしょうか?
A. 実際の仕事量および、役職者への引き継ぎが可能であったかどうかがポイントになるでしょう。
原則としては、禁止命令を出していたとしても、労務を提供された以上はこれに対して対価たる賃金を支払わなければなりません。ただし、過去の判例では、残業代を支払わなくても良いという判決も出ています。
神代学園ミューズ音楽院事件控訴審判決(東京高判 平成17年3月30)
この裁判では、音楽院に勤めていた従業員複数名が、理事長に対して時間外労働に対する未払賃金の請求を求めた事件です。判決では、従業員らの請求は棄却され、残業代の支払いが認められませんでした。判決のポイントとしては、以下の2点になります。
- 時間外および休日労働の禁止など、残業禁止命令を出していた
- 残業がある場合には役職者への引き継ぎを命令していた
以上のことを従業員に命令し、徹底していたにも関わらず、これらの命令に反して行われた残業に対しては、賃金が発生する労働時間であったとは認められないということです。
従って、残業禁止命令を出していたにも関わらず行われた残業に関しては、その残業が従業員にとって回避可能だったか否かがポイントになると言えるでしょう。当然ですが、明らかに就業時間内に終わらない仕事を従業員に押し付けた上で、残業禁止命令を出し、従業員に残業の責任を押し付けて賃金を支払わないような行為をした場合には、残業代を支払わなければならない可能性が高いです。