養育費、慰謝料、財産分与など、主にはお金のことや、その他の約束に関してまとめた書類を、離婚の公正証書と言います。公証役場の公証人が、民法・公証人法などの法律に従い、作成する公文書です。
離婚の公正証書とは
より噛み砕いて言えば、「お金のことに関してはこうしましょうね」「こういう約束は離婚後も守りましょうね」という内容をまとめたものが、公正証書となります。それを役所に提出することで、もし離婚後に公正証書で取り決めた約束を相手が守らない場合、金銭の支払いについては「強制執行」が可能となります。いわば「差し押さえ」が可能なのです。
- 公正証書に記載する内容については、ざっと列挙すると、次の通りとなります。
- 離婚に関する合意
- 子どもの養育費
- 面会交流(時間、頻度など)
- 慰謝料
- 財産分与
- 住所が変わった場合などの通知義務
- 強制執行認諾
これら諸々の約束事を書面にまとめておけば、後から紛争が生じた場合も「離婚前に公正証書で決めたことでしょう」と、相手の言い分をある程度は封じることができます。
もし公正証書を作っておかなければどうなるか――すなわち、諸々の取り決めを口約束だけで済ませていた場合(あるいはまったく決めていなかった場合)は、後から言い争いになった場合、非常に厄介です。夫婦間で「合意」があったとしても、強制執行にあたっては調停・裁判などの手続きが必要とされ、そもそも「合意」があったかどうかの議論も生じるかもしれません。公正証書は必ず離婚前に弁護士に相談して作成しておきましょう。
公正証書の作り方
離婚に関して諸々の取り決めを記入した公正証書は、公証役場で作成します。
公証役場とは
全国に約300カ所ある公証役場ですが、その他にも「公証人役場」や「公証センター」「公証人合同役場」といった呼び方があり、通常の役所とはまた違った施設となっています。
「公証役場」というのは、離婚の公正証書の作成の他にも、私署証書、会社等の定款に対する認証、私署証書が確定された日付の付与などを行う官公庁です。「公証人法」という法律に基づいて運営される役場で、請け負う金額についても、全国で統一されています。
公正証書に記載する内容
離婚に関する公正証書の作り方ですが、原則としては夫婦で役場に出向き、作成するものと決められています。しかし、代理人(弁護士)を立てて、手続きを行うことも可能です。
この公正証書に記載する内容に関しては、夫婦が離婚に合意しているという事実、その他離婚に伴い定める条件が主となります。具体的には、慰謝料や財産分与、子どもの養育費などお金関連のこと。面会交流の頻度や時間、住所変更時の通知義務、生産条項、などなど。約束が守られないときの「強制執行認諾」なども記載しておかなければなりません。
公正証書の取り決めが守られなかったら
離婚に際して諸々の条件を決め、公正証書を作成して明文化しておけば、将来的に、もし相手がその内容を守らないようなことが出てきた場合に、「強制執行」をすることが可能です。強制執行とは、いわば預貯金などの差し押さえのことを指します。
ただし、公正証書の内容が曖昧な場合には、強制執行が認められないことも。公正証書に盛り込む条項は、後々に法的な強制力が発揮されるよう、充分に注意して記入しなければなりません。やはり法律の専門家である弁護士に相談しながら作成するのがベストです。
離婚における協議書を公正証書として作成し、役所に提出しておくと、離婚後に一方がその約束を守らなかった場合に、「強制執行」をすることが可能です。たとえば、公正証書に定めた通りに養育費や慰謝料などの支払いがなされなかった場合。公正証書がない場合でも裁判の判決を得て強制執行することはできますが、公正証書があれば、裁判をする必要もなく、執行手続きを申立てることが可能です。約束を守らない相手の給与、預貯金などの財産を差し押さえて、強制的に養育費・慰謝料などを支払わせることができるのです。