刑事裁判において、被害者を守るのは検察で、加害者を守るのは弁護士、というイメージが一般的にあるかと思います。それは確かに間違いではありません。
しかし、本当に被疑者が「犯人」であるのか、また「犯人であるとして、その罪は、どの程度の刑罰に値するのか」というのは、裁判をしてみなければ決められないことです。
弁護士はなぜ、犯人を弁護するのか――その理由は、そういった部分にあります。
「無罪」もあり得る
検察官が起訴した事件は、その多くが有罪になることは確かです。
しかし、だからといって、起訴された人がすべて有罪というわけではありません。割合としては少ないものですが、「無罪」というケースもあります。もし、弁護士が被疑者の言い分に耳を貸さず、どうせ有罪なのだからと弁護を怠り、無罪の方が罰を受けることになれば、「刑事裁判の正当性」、また、一般市民を守るものである「法の信頼」が失われます。
量刑は慎重に決定される必要がある
被告人が確かに罪を犯していて、そのことを自白している場合でも、罪に対してどの程度の罰を下すかということは、慎重に決定されなければなりません。不当に重い(あるいは軽い)罰がくだされることになると、やはり「刑事裁判の正当性」に疑問符がつきます。
公正かつ中立な裁判が行われるためには、被告人の罪を追及し厳正な法の裁きを求める検察官だけでなく、被告人の側にも言い分を主張する弁護人が必要で、またその弁護人は被告人のためにベストを尽くさなければなりません。そういった意味で、刑事弁護人の役割というのは、たいへん重要なのです。
実際、刑事弁護によって、検察官が起訴した罪名よりも軽い罪になる「認定落ち」を得られることは少なくありません。
もし、悪人に裁判の適正手続はいらない、というような社会になると、これは非常に危険です。そうなると、明日はあなたが、いわれのない罪で悪人とされ、裁きを受けることになるかもしれません。そうならないために、弁護士は、どんな被告人も弁護するのです。
まとめ
- 無実の罪で裁きを受ける人を出さないためにも、弁護士は被告を守る必要がある。
- 仮に被告が有罪であれ、量刑は慎重に決められなければならない。
- 公正中立な裁判のために、被告を追及する検察だけでなく、被告を守る弁護士も全力を尽くす必要がある。
- 刑事弁護によって、「認定落ち」を得られることも少なくない。