参照元: 犯人に損害賠償請求をすることができますか|京都はるか法律事務所
もちろん可能です。ただし、刑事裁判で取り扱われるのは、あくまで刑事問題だけであり、民事上の問題、すなわち損害に対する賠償請求は別の取り扱いなので、そのための調停、裁判はまた別に行うことになります。
「示談」もよく考える
刑事裁判で有罪になった事件に関しては、その後、損害賠償請求をする裁判を行えば、比較的スムーズにその支払いを命じる判決が出ることでしょう。
しかし、判決が出ても、実際に損害賠償が受けられるかどうかは、また別の話です。というのも、被告人にその資力がなければ、無い袖は振れないということで、何も回収できないという現実もよくあります。
また被告人の親や親戚にそれだけのお金があるにしても、法律的には、親族に対しては何も請求できないのが原則です。刑事裁判の判決前は、被告人の親や兄弟も、何とか罪を軽くしてもらうためにお金をかき集め、被害弁償しようとするかもしれませんが、一度罪が確定すれば、「それ以上何をしても意味がない」という判断をし、一切弁償しようとしなくなることも珍しくありません。
よって、もし加害者側が「示談」を持ちかけてきたら、現実的に刑事裁判の後で慰謝料を取れるかということも考え、被害者サイドも慎重に対応しなければなりません。
「損害賠償命令」とは何か
刑事裁判において有罪判決が言い渡されると、一定の対象犯罪では、その刑事裁判所がそのまま損害賠償命令の申し立てについて審理し、支払いを命じる判決を出すことがあります。これを「損害賠償命令制度」と言います。
この制度では刑事裁判を取り扱った裁判官がそれまでの経緯から民事上の損害賠償についても判断するので、冒頭で述べたような、別取り扱いの民事裁判を起こす必要がありません。被害者にとっては助かる制度です…が、やはりこれも被害者にそれだけのお金がなければ、それまでで、実際には加害者からは何の賠償をも受けられないこともあります。
国から支給される「犯罪被害者給付金」もあるので、弁護士に相談しながら、その支給を受けられるかどうか、「示談」はどうか――など、お金の問題も片付けていきましょう。
まとめ
- 損害賠償請求は被害者の当然の権利として可能。
- 加害者にその支払い能力がない場合は、賠償を受けられないこともある。
- 加害者サイドの「示談」「被害弁償金」は、後のこともよく考えた上で、受け入れるかどうか決めなければならない。